眠れません。寝ろって感じですが、痛くて痒くて眠れないので折角だからとパソを再起動。
なんか書きたいんです。(だって夜中歌えないし)
透明な雫が落ちてくる。
薄暗い部屋の中、鉱石の煌きが僅かに降って来る光によって散らされる光景は何度見ても美しいものだ。
方々に飛び散った光の音楽よりも輝かしいのは中央。
その部屋の中、椅子に座り、美しい髪は黒曜石の如く、白皙の美貌に色は無く。
生まれてこの方これより美しいエルフを見た事はない。
その青ざめた白い顔の中にある輝石のような瞳には光が無く、遠くを見つめたまま寂しげにうつろいでいる。
「母上。」
マイグリンが一度小さく呼びかけてもその瞳は動く事無く、ぼんやりとしたまま、麗しく美しい同郷に心を馳せているのだろう。
ゆっくりと優雅な足運びでその美しい人の前に膝まづく。
「母上、私です。」
見上げて手をとり、雪の如く麗しく、氷の如く血の通いはないかのように見えるその手にゆっくりと唇を落す。
冷えた手を温める為になんども擦り、少しでもこの生き人形のような人に血を通わせたくて、マイグリンは優しく擦る。
「母上、母上。」
やがてその瞳に光が宿り、ゆっくりと真珠の如き唇が開かれたるものは、どんな輝石を見つけ出すよりもマイグリンにとっては嬉しいのだ。
それはあたかも大粒の雪が掌に落ちて一瞬軽やかな空を飛ぶ者のきらめきを写し取ったかのような、若しくは緑の森で雪解け水の音を聞きながら、ふわりと髪を揺らす風の暖かさを感じた時のような。
彼女の目の中に自分が写った瞬間、そんな感覚に心が淡く柔らかい風に包まれるのだ。
アレゼルの瞳の中に自分がいるだけで、その声が聞けるだけでもう何度もねだって聞いた勇者よりも誇らしく、どんな愛を勝ち得た者よりも幸福なのだと思う。
「ローミオンですか・・・」
「はい、母上。本日の調子は如何です?」
「いつも通りです。」
会話の中では決してアレゼルが自分の心配をしたりする事は無い。
何をしているのか。
何に悩んでいるのか。
自分の子どもである自分に対してよりもアレゼルは飛び出したあの場所をこそ懐かしみ、思い出し、郷愁に駆られて涙するのだ。
アレゼルと話す事が出来るのは、アレゼルの居た場所やエルフ達についてだけなのである。
時々その事実は心に蔦が絡んだかのようになる事があるが、もう慣れてしまったのだ。
今はただ、アレゼルの口から言葉が唄のように流れ出すのを聞きたい。
「そうですか、では母上。母上のお兄様達の話とゴンドリンの話を聞きたいのです。」
膝立ちになって、目を輝かせる我が子の手に手を重ねる事はせずに、遠くをみるかのようにしてアレゼルは遠き都、ゴンドリンの話をし始めた。
マイグリンです。
私の妄想の中では、アレゼルは自分の子どもよりもゴンドリンの方が大事。
だって夫を愛しているわけではないから。
子どもがねだるゴンドリンの話をしながら懐かしくも美しいあの場所へかえりたいという郷愁を深めて行く。
だって・・・あんまり可愛がっていた節がないんですもの。
マイグリンは自分を押さえる事ばかりを覚えていく。
母に懐きなくっているマイグリンは母の持つ父への深い憎悪がやがて伝染していってはいるが、マイグリンをマイグリンと見て声をかけるのもエオル(それが自分の持つ技術を教える為だけであっても)だけだからそれなりに情はある。
賢すぎるぐらい賢いため、一見して従順。
後ろ向き。
でも、父の自分へ投げた槍を見て何かがプツリときれた瞬間母のアレゼルが庇ったのだ、その時の衝撃は大きかろう。
何せ14?歳ぐらいの時、目の前で父親に殺されかけて。母がそれを庇い、怪我をして、母の親族により父が殺されて、その後に槍に塗られていた毒により母が死ぬのだから。
想像を絶する体験です・・・
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