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昂真秀
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見習トゥルバトール
趣味:
妄想
自己紹介:
昔は錬金術師を志していたが、現在は吟遊詩人を夢見ている。
最近は『思考するハムスター』『黒髪ロングの狸』等々好き勝手に呼ばれております。
Blong Pet
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だ、誰か私に文才を下さい・・・うう、落涙。

前々から書こう書こうと思いつつ、なかなかまとまらなかった小話です。

女房狂いの忠興と、凛とした玉子です。といいたいのですがわたくしの文才では・・・は・・・どうか、私が辛くなるような突っ込みはよして下さいね、批評は常々三つ指ついてお待ちしておりますれば、どうぞ、よしなに。

親切モットーな優しい方は下記より。

ああ、期待は禁物ですぞ?

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粗末な輿に乗り、緑の木々を眺め連れて行かれた寺の中で一人雅な庭を見る。
昨今の流行であるやつしを取り入れたなんとも珍しい寺であるな、と思い坊主に問えば「忠興様のご命令で」という。
趣味が良い忠興らしい気遣いにしょうのないひと、と呟くと侍女が困ったように笑った。
この寺の庭から一歩も外に出る事がない替わりに差し出された風景はゆくかわの流れは絶えずして、と口ずさむが相応しいものである。
おかわいそうに、と泣く侍女が差出す十字架に笑い、そのような庶民のものを、と言えば更におかわいそうな奥様、と泣く。
かわいそうとは何か。
ここへ連れられて来たという事は父は死んだのであろう、母は自害をしたのであろう。
なにはともあれ誇り高い母であった、律儀で繊細で矜持の高い、だが優しい父であった。これも時代であろう、と玉子は思う。
やがて玉子も返されるであろうが、その知らせを受ければ見事己の首を切ってしまわねばなるまいて。
嫁ぐ際に持って来た短刀は先日研ぎに出させており、鞘から抜いてみれば中央に来る日を受けて眩しく輝き反射した光が庭石に跳び鴨川にいる小魚のようである。
枯れ山水に落ちる葉を眺め、のんびりと思想に耽っていると足音が聞こえた、耳慣れた、間違う事などまず無い足音が。

先触れもなく、振り返れば日を背にした姿に目を細めるとそのまま玉子の目の前に腰を降ろしむす、と口をヘの字に曲げている。
膝を向けて座りなおしゆっくりと頭をさげればさらさらと肩を滑る緑の黒髪が床に模様を描くが如く落ちた。

「よう、おいでくださいました。自ら「不便は無いか」

玉子の言葉を遮って低い声が小さく震える。

「はい、庭も美しく、調度品も趣味よう揃えて下さりまして、目によう御座います」

「そうか」

無口な男である。
忠興という男は。父が風流人として名高いだけに息子は、と見ればあまりの違いに妾腹で父の薫陶を受けておらぬのではないか、と揶揄する者もいるが、玉子の目から見れば間違いなく彼らは親子である。
というのも、屋敷内にある品々や、忠興の作る甲冑はその趣味の良さを間違いなく受け継いでいるのだから。


しかし暫く見ない顔であったがゆえ、その翳りに何があったのか察しようも無い。最後にあったのは深夜突然やって来て暗闇の中爛々と光る目に炎を宿して玉子の腕を掴み低い一言「光秀殿が亡くなった」
それが最後に会った時である。

無言の時間を過ごしにくいとは思わぬが、いかんせんこの状況下、忠興は横暴ではあったが間違いなく粗雑に扱われた記憶もなく、良い方に嫁ぐ事が出来た我が身を振り返り何を歎く必要があるか、と自嘲した。
市井に下る手もあろうが、それは玉子の明智家の、ひいてはこの忠興に嫁いだ身を汚す事以外に異ならぬ、ゆえに取る手段は一つであると知っている。
目を伏せた忠興に最後までお優しいと玉子は再度深く頭を下げた。

「忠興様、有難う御座いました」

この非情な世において、幸福な事であった、母もきっと幸福であらせられたのであろう。
このように終わるのも悪くはない、と思った腕を強く捕まれ顔を上げればそこには常の忠興の様相とは違う、そう、あの暗闇の中に見た瞳が在る。

「許さぬぞ玉子」

「何を、」

「そなたが父は農民の兵に殺されたと聞く。母御は自害なされたそうだ。だが後は追わせぬぞ」

乱暴に玉子の袂に手を入れると桔梗紋の入った短剣を取り出しそれを遠くに投げ捨てた。


「何をなさいますか!」

今となれば亡き父の忘れ形見、母の持たせた品である。

「渡さぬぞ!決して誰にも渡しはせぬ!そなたは帰る家も頼る者もおらぬ。そなたが頼るはこの忠興只一人、よう、覚えておれ」

獣の咆哮のような、いや、いっそ呪詛のような言葉に玉子は今まで己が見てきたものは何であったのかと自答した。
常に表情は硬いが優しい方であった、側女も沢山いたが、決して玉子を粗雑に扱う事はなかった、触れる指先もぎこちなく、無体を強いられた事は一度もなかった、だが。

目を見張る玉子を強く抱き寄せて叩き付けるように床に組み敷かれた。

落花狼藉とはこの事を言うのであろう。

息の上がる玉子を抱きしめて、折れよとばかりに抱きしめてうめく忠興の背に力なく回した指先を捕まれて繰り返す念仏のように言う忠興にああ、この人は、と玉子は哀れに思った。

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