史実(日本戦後)の描写があります。個人的な政治の意図などは一切ありません。国辱の意図もありません。
苦手な方、政治的なご意見を強く持っておられる方は不愉快な思いをさせる可能性がありますので読まないほうがいいと思います。
何でもおk、って方は下記をクリック。
あ、後で先に書いた分も書き直しますが、この3話から国名ではなく人名を使います。ご指摘ありがとうございました。
あ、なんか出来が悪いのでこの話は後ほど大幅改変する可能性有りです。
うん・・・自覚ありますからあんまり突っ込まないでやってください。頼みます。
あ、アルフレッドヤンデレ?かも。アーサーの扱いがちょっと酷いと思う
やがて車はホテルに着き一同はそれぞれ夜を過ごして朝この島国を発つ予定となっていた。
黒い旧陸軍徴用陸軍車が去る砂埃を見守るでもなく皆はホテルへ入って行くが一人ぼんやりと立ちすくんでいるアーサーは赤い赤い夕陽をみつめている。
ふと王が振り返り、促すがアーサーは動かないを見て中国は大きな溜息をついた。
「アーサー・カークランド、行くあるよ。鬼に遭いたいあるか?」
凡庸な瞳で、血に塗れた虎門要塞で見た緑の目の鬼子と同一人物に見えない視線が緩やかに中国を写す。
「逢魔ヶ刻か」
「よく知ってるね、お前はアジアの風習なんぞ興味がないと思ってたね」
「日本、いや本田が言ってたから…」
「お前そんなにアレが好きか」
嘲笑うような中国の言葉はアーサーの脳内を駆巡ると五月の湖のような美しさをたたえて心に響いた。
ゆっくり首を横に振るアーサーは日本がいた館の方向を見て切なく睫毛を震わせる。
「はっ、好きでは足りないなどと陳腐な言葉で飾るつもりか?アレにした事も忘れて。そもそもなんでアレが勝目のないこんな事をし始めたか知らない解らないとは言わせないね、アレが我に刃を向ける程に追詰めたはお前等ね」
「許せないのか」
「何を当り前の事を!許せない、でも哀れにも思うね、お前等に利用されてあそこまでなったアレを…百年は揉めるかもしれないね、でも我等は亜細亜、いずれは我の元に帰るね、お前なんかと馴れ合わず」
王の言葉を遮るようにアーサーが笑うと言葉をとめて王は柳眉を歪みめアーサーを睨付けるとアーサーは失敬、と軽く手を上げて肩を少しばかり上げる。
「何がおかしいか」
「世界はいまや狭くなった、思惑通りにはいかないもんだ」
「お前の出来の悪い厄介な弟と一緒にすんなある」
「一緒とは思わない」
「そんなうだつのあがらない暗い事考えるよりも美国のした事で暫くは五月蠅くなるね、我も開発をしなくてはならなくなった、全く厄介な事を」
「今それ所じゃないだろう」
「それでもね。核を、あれだけの威力があるものを美国だけが持つのを見てるだけなんて甘い世の中じゃないあるよ、自分が育てた弟のしでかした重さに苦悩するがいい」
そう吐き捨てると王は身を翻し建物の中へと戻って行った。
アーサーは見送りもせず、ただ…じっと日本が居る方向を見つめ眉を顰めると溜息を一つ零す。
蜩が、鳴いている。
ヒュウ、ヒュウという恐ろしげな呼吸音のする室内に客人を見送り終えたアルフレッドが戻って来ると冷えた部屋で菊の身体を清めていた老婦人が顔をあげ、戸惑うように天蓋を閉じようとするのを手振りだけで止めたアルフレッドは老婦人の手から優しくだが有無を言わせない仕草で手巾を取るとにっこりと明るい笑顔を浮かべる。
「もういいよ」
もう過去に数度行われているソレに抵抗する事なく老婦人は黙って一礼すると退出してゆく。
残るは虫の息で全身が爛れた菊とアルフレッドのみ。
アルフレッドは常人ならば躊躇するようなその肌にそっと触れ清潔な水に手巾を浸し絞るとゆっくり拭い、薬を全身余す所なく塗り、包帯を巻いてゆく。
まるで何かの儀式のように。
まなざしは優しく手つきは赤子に触れるが如く。
包帯を変えるのは激痛を与えているのだろうヒュと篠笛に強く息を吹き込んだのと似た呼吸音を聞きながら、最後に顔に包帯を巻き終えたアルフレッドは頭部を柔らかいベッドに横たえると、終わったよ、と言いながら口付けをする。
枕元に座り直し、一度ベルを鳴らせば直ぐに運ばれてきた珈琲の芳香に目を輝かせて菊の側に香りが届くように置く。
飲めないのは理解の上でカップは二つ用意され、ゆっくりと足を組んだ。
「菊、新しい豆だよ、君は結構好きだったよね。ルドヴィクに聞いたよ本物の珈琲が恋しいって言ってたって」
代用珈琲ですら手に入れにくくなっていたと聞く。
今この外、民間では闇市は外国人が幅をきかせており、着る物もいや食べる物すら事欠き、戦災孤児がジープを追いかけている状況だという。
GHQの物資の中から持ってきたアルフレッドの名前で取り寄せた品々の三分の一以上の品はこの屋敷に運び込まれている。
最新の医療は当たり前。
医薬品も食事も服も何もかも菊が喜びそうなものを、とここの使用人に問い、本国への手紙にそのリストを足して送っている。
蜩の声が窓の外から微かに聞こえて、点滴の落ちる音がそれを遮っていた。
消毒薬と珈琲の香りが混じった部屋の中、返答の無い本田菊の身体と二人きり、アルフレッドは確かに今幸福であった。
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