ああもう、なんなんでしょう。
空を飛ぶのはもう心が締め付けられそうです。
薄情な貴方、冷徹な私。
伝説の氷の心のお姫様よりも冷たい指先で互いを冷やすだけなのかもしれないわね。
貴方の指先一つで私の心は揺れ動く。
貴方の微笑で世界は鮮やかに色づき、虹がかかった瑠璃色の島を渡れるのに、
貴方のつれない目線で私は氷河の海に投げ出された小さな小船のよう。
そんな時にはもう、小さな絆なんて役には立ちはしないのです。
わかりますか、心細い綱など、今にも切れてしまいそうで、不安しか誘わないのです。
貴方の姿が映った鏡を抱き締めて、貴方の手が触れた贈り物を抱き締めて、眠る以外何も、何もない。
私には。
アラバスタの宝石箱、君の唇のような石榴石の指輪。
月の光をうつしたブルームーンストーン。
世界を写す、太陽と時間を告げる方位磁石。
哀しげな音色のオルゴール。ドルイドのドリームボール。
幼子がガラス玉を大切にするように、私はそれらの品々を抱き締めて、
一人孤島へ行きたいのです。
そうできたなら、貴方を待つ苦しみも、私を縛りはしないでしょう。
君を思い出しながら、金剛石のネックレスに人差し指を絡ませて、私は幸福な夢の中、君を失う事など、夢にも思いもせず、眠りにつけるのでしょう。
そうできたなら、私は世界で一番幸福でいられる。
柔らかい生地のテディ、金の巻き毛のルクレツィア。
柔らかい山羊のクリーム。
甘いチョコレート。
童話の世界の小さな女の子のように、小さな小屋の中で、幸福と甘いお菓子と品々に囲まれて、薔薇の香りに心を染めて眠りにつけるのです。
それは幸福。
それは理想。
所詮夢は夢なのですけれどね。
でも、いつかは私は一人で、赤い薔薇、白い薔薇、薄紫の薔薇の養分となれたらと、思うのです。
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