鬼の霍乱
オリジナルの奇怪研究会の短編です。
大半の方はご存知無いかと思われます、つまりはバックプーズ。
数少ない読者様ご覧下さいまし。
注 馬鹿話
「諸君」
シルクハット裾を風に揺らして木造の部室の中、卓上に集まった、もとい集めた面々を見渡し、青砥は卓上に足を乗せた瞬間、床波に笑顔でボールペンを刺され渋々と足をのかす。
「今日集まってもらったのは他でもない、依頼人からの手紙だ」
あいも変わらず何時何処から何処へやってきたのか不明な手紙をどん、と卓上に叩きつけて、それを床波が静かに開くと、眉を顰めて溜息をつくとそれを真実へと手渡した。
『一日遊ぶべし』
あからさまに青砥の字であった。
真実は立ち上がり、己の荷物を持つとさっさと扉の方へ歩いていくのを青砥はにんまりと見送り、その様子に真澄は嫌な予感を覚えて自身も立ち上がろうとすると、目の前を青砥のステッキが遮る。
「通して下さい」
「真澄ちゃんは残るんだよ、他は・・・んー床波はいていいけどね」
「僕を巻き込むな」
「じゃあなんで召集したんだよ」
馬鹿馬鹿しい、と溜息と供に吐き出された言葉に青砥はにんまりと笑う。
「ちょっと寂しかったから」
「天変地異の前触れだ」
ふと首をひねり、室内でもかぶったままの青砥の帽子を無言でとった床波はああと息を漏らす。
「体調悪いのか?」
「は?何を言っている?この私が人間などがかかるような病気になるようなそんなやわな形をしているとでもいいたいのかね?」
「真澄ちゃんごめんね、この馬鹿は風邪ひいて心寂しくなっているらしいよ」
「熱はどうなんだ?」
「体温計、というか医者に行った方がいいのではないでしょうか?」
千馳の言葉に青砥は蒼白になり、手の甲を額にたてて少しよろめいた。
「医者!この私に医者に行けというのか!そんなとんでもない!」
「じゃあ熱はからなきゃな。せめて風邪薬くらい・・・」
「そんなものは断じて受けはせぬ」
どうするこの馬鹿、という一同の苦悩を見越して真実は退出したに違いない。
さて、と腕を組んだ床波を見て、青砥は立ち上がる。
「熱を測るまでは譲歩しよう」
何を思いついたのか、ふふふ、と不気味な笑い声を上げて半笑いで立っていた。
およそろくな事ではないのは確実というもの。
「ままままままままままままま、真澄ちゃんがおでここっつんこ★で熱を測ってくれるならばだ!」
本人曰く、天才的な頭脳をくだらない事にしか活用しない阿呆に全員の冷たい目線が突き刺さった、ぐっさりと。
「それいがい認めない!認めやしないぞ私は!このまま真澄ちゃん+αでアフタヌーンを楽しむのだからな!それは何人足りとも邪魔はさせぬぞ!」
はあ、と溜息をついた真澄は困ったような床波を見て、本意ではない頷きをみせると青砥は気持ち悪いくらい笑顔になる。
「真澄ちゅあーん」
両腕を広げて喜色満面の笑みを浮かべる青砥にかつかつ、とヒールを鳴らして青砥へと近づくと、真澄は息をすうと吸い込んだ。
「オラァ!」
ドスのきいた低い声で気合を入れ、熱を測った、もとい。
「うわ、流石に痛そうだねえ」
「真澄ちゃん、それ頭突きだから」
部室の床に沈んだ青砥を荷物のようによういこらしょと抱えあげて千馳は片手を挙げていい笑顔を見せた。
「保管に持っていけばいいんですか?床波先輩」
「あー・・・そうしておこうか。じゃあその後僕たちはランチでも行こうね」
にっこりと。珍しい提案をした床波に真澄がえ?と首をひねる。
軽く床波が右手をあげると、そこには青砥の財布。
「迷惑料」
「ああ」
「何処に行くんですか?」
「小夜啼鳥でランチ。真実さんからメールがきて蒼さんが帰ってきたらしいよ」
わあ、と皆の歓声が上がり、そうして本日は奇怪研究会平和な終わりとなりましたとさ・
PR