新しい話の原型というか、とりあえず忘れない為に日記にアップしています。
読まなくて全然大丈夫な感じですv
因みに創作の夜鳴や奇怪に抵触する可能性大?かも?どうなんでしょうねえ
あ、御堂家西の時期当主や芦刈、青砥もこの学校出身のつもりです。
イギリスの郊外にある大きなふるい城に住む貴族階級の男は敷地内に建物を作ります。庭も家も全て日本製の日本を模したものですが、それは大きく高い塀に囲まれており、口外せぬ口の堅い召使だけを使い、その家との行き来は全て主人の許可が必要でした。
豪華で金に糸目をつけぬばかりか確かな審美眼で選ばれた美術品の中の家に風にもあてぬよう、絹の着物を着たのは、イギリスにいよう筈もない日本の人形のような少女でした。
それはこの家の主人が日本へ行った際、幕藩体制崩壊に乗じて彼女を攫ってきたのです。
長崎の出島にいるような少女を攫ったのならば諦めて従順になったのでしょうが、彼女は大名の家の子でした。扱いが良いとは言い難かったのですが、彼女は誇り高き家の、しかも藩主の後妻に虐められていたとはいえども、公家の母を持ち教養高くだが武士の教育も受けた淑女です。
そんな彼女は閉じ込められた空の下、日本とはあまりにも違う環境につれてこられる最中に何度も己を害しようとしたのですが、それを阻止されしかも妻にされてしまったのです。
夫には従順にと育てられた彼女も彼を夫と思えず、このイギリスに連れてこられても毎日毎日泣いて返して下さいと閉じ込められた一室で小さな声で言いつづけました。
無論、主人には既に妻も子もいましたが、彼らに対する態度は優しく、紳士であったので、貴族同士の結婚であった夫人は哀れな少女を犠牲にする事により諦めたのでした。
陰鬱な空を見上げて泣く彼女に主人は日本の着物をあたえ、最上の食事を準備し、宝石をあたえました、大名家から大量に購入した美術品等を置き彼女が日本にいた頃そのものの家の中に閉じ込めました。だが、彼女はいつも哀しそうにしているだけです。
やがて、彼女は妊娠をしました、主人の喜びはわかりやすいもので、彼女を喜ばせようと日本の牡丹や百合の株を輸入させ、庭に植えました。
夫人には夫が彼女を愛するあまり嫡男として選ぶのではないかと気が気ではなかったのですが、それはしないという署名を渡され胸を撫で下ろしました。
妻は知っていたのですが、息子達には知られぬよう振る舞う姿や、それまでの彼の事を思うと、夫人は正直夫があまり好きではなかったので害を成す存在でない日本から来た哀れな少女を見て見ぬふりをしていました。
やがて彼女が産んだ子どもは男の子で、すくすくと育ち、その子どもの成長をほほえましく見守る主人でしたがあいかわらず哀しそうな少女に腹立たしさを覚え、手を上げるようになっていきました。
産後の肥立ちも悪く、元より少なかった食は更に細くなっていき、少女はやがてオートミールさえ口に含むのが難しくなった頃ようやく主人が彼女の体調に気付き、己の所業に愕然としました。
愛しているのだと、叫びながら彼女を腕に抱き、呪ってもいい詰ってもいい、何をしてもいいから食事をしてくれと仕事も何もかもほおりだして彼女の邸から出ませんでした。
「何が欲しい、どんな高価ものでも必ず手に入れてみせる」
そう言う主人に彼女は一言
「日本に帰りたい」
と涙を流します。
「それ以外、それ以外なら。お前が私の側から居なくなる以外の事全てを私はお前が望むならばしてみせるから」
それ以外望むものなど何もないのだと呟く彼女を抱きしめて決して此処から出さないと叫びながらも彼女のあまりに細くなった身体に先の短さを感じ、ようやく日本への出航をきめたのでした。
だがそれは既に遅く、出立の日付が決まったと告げに急いで彼女の元へと行った主人が見たのは、障子からもれる光の中真っ白な着物を着て、顔には白い布をかけられた彼女の側に小さく座った息子の姿でした。
主人は叫びます、怒号のように、天に届くように叫びました。
一昼夜が過ぎ、主人は枯れた喉で彼女の名前を呼び、布団から抱き起こせば緑の黒髪が月明かりに輝きます。
この黒髪を、細い指先を、見つめる静かな瞳をどれだけ愛した事でしょう。
それが傲慢なものであっても主人は彼女を愛していたのです、出会った瞬間から。
冷たい唇に口付けをして、そっと布団に横たえると、ふと、しずかに己の狂気の様子を静に受け入れていた息子を見つめます。
息子は耳の端にかかる髪が揺れて主人を見つめ、その目はよく彼女と似ていました。
おいで、と主人はいいながら男の子を抱きしめて、そうしてこの子には決して間違うまいと強く誓ったのでした。
それは、一昔の話。
後に、この城は改装され、一族は別の場所へと移り住むがこの一族が土地から権力を失う事はなかった。
そう、現代、この城はパブリックスクールとして機能している。
代々その一族から理事は出ており、だが、一角にある日本庭園は城の中からは見えず、別棟扱いであった。
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