蕗田嬢と合作の、八雲君の顔に傷がついたらどうなるだろう、という話です。
ご興味があられる方はどうぞ~
「何それ。」
低い唸るような声で江戸紫の袖を翻し、パタパタと騒々しい音を立てたまま関に荷物をほおりだし、そっと八雲の傷にさわらぬよう蒼は八雲の顔を手で包だ。
「殴られたとは聞いていたけれど本当に酷い…」
そっと睫毛を落とした愁い顔の蒼に八雲は鼻の奥がツンとする。
「でも東郷夫人からわけていただいたお茶が駄目になってしまって…」
「物事全てに理由がある。だから今回は縁がなかったの、また縁があれば手入るからその時には一緒にいただきましょうね。」
優しく撫でられる手に八雲は頭を預けて目を閉じていたから気がつかなかた…蒼の表情に。
夕飯を食べ終えて、一息いれている時、にっこりと蒼は手帳を出して、ねえと八雲に声をかけた。
「八雲君に手をあげた人の名前と生年月日教えて頂戴。」
嫌な予感がした。八雲は月を見れば月は片眉をあげて首を振る。
「月さんがもう既に仕返ししてますし…」
「どんな?」
「どんなって・・・」
月はふい、と指をふっただけだ。
その仕草を真似ればにんまり、と蒼がわらう。
「ならば私は別の方法にしなければね。
ふふ、うふふふふふふ。」
ぞく、と背筋が凍る笑い声に八雲は顔を引きつらせるが、それよりもそっと再度触れてくる蒼の優しい手に表情の強張りはそっと消えうせた。
「痛い?」
「いいえ、蒼さんが心配して下さるからもう痛くないです。」
「かわいそうに。・・・・・八雲君の顔をよくも殴れたものよね・・・たっぷりと後悔してもらわなくてはねえ。」
「蒼さん・・・・流石に警察沙汰はまずいと思うのですが。」
「証拠なぞ残りはしないわ。そもそも私たちのやり方を立証できる国家じゃないものね。完全犯罪なんてちょろいものよ。」
にっこりと微笑む蒼の表情に八雲はここに住んでまず一つ覚えた事を己の胸中で復唱した。
世の中には逆らわない方がいい事があるという事。
もし目の前にいるのがそうなら。
自分に害がなければいいのである。
すっかり月に毒された八雲はそつのな笑顔でそうですね。と微笑みうなずいた。
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