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プロフィール
HN:
昂真秀
性別:
女性
職業:
見習トゥルバトール
趣味:
妄想
自己紹介:
昔は錬金術師を志していたが、現在は吟遊詩人を夢見ている。
最近は『思考するハムスター』『黒髪ロングの狸』等々好き勝手に呼ばれております。
Blong Pet
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いつもの如く創作小話です
読まれる方は下記よりどうぞ

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先日に日記に別口でシェウィさんがお返事くださりまして、非常に・・・楽しく思いました!流石だシェウィさん!
なにやらえらく楽しいので先日のようなうざったい日記をちょこちょこ書いていくやもしれませぬ・・・お読みになる方はどうぞお覚悟なさいませ。
さて、最近はとみに顔がいたく、顔を四等分すれば左上のあたりが大変な事になっていまして、夜中に顔が痛くてうなされています。(既に赤黒い。病院の塗り薬が痛く、染みて、塗った瞬間にひい!というぐらい痛いのです。)
なんとか化粧で誤魔化しているのですが、化粧をとれば結構恐い事に。
痛い・・・その痛みでいくつか怪談を思いついたので後日アップしますね。
これぞ、万事塞翁が馬というやつか・・・





さて、いつもながらオリジナルの夜鳴の短編です。ちょっと長くなりそうなので何回かに分ける予定(忍耐力の欠如)


菊の忘れがたみ

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いつもの夜鳴の小話です。ご興味がある方は下記へどうぞ。
今回は、酒豪ではなく、量は飲まぬちょっと酒が好きな方ならば同感していただけるお話かと思われまする。

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いつものおりじなる、蕗田嬢との連作作品短編です。
あっちかきこっちかきーとふらふら気味で申し訳ない。

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蕗田嬢と合作の、八雲君の顔に傷がついたらどうなるだろう、という話です。
ご興味があられる方はどうぞ~

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オリジナルで蕗田嬢と連作の夜鳴の番外編。
とんでもないギャグです。

よろしい方はどうぞ。本当にどうしようもない話です。

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毎度お馴染み蕗田嬢と共作の夜鳴シリーズ。
ギャグです。本当にギャグでしかも結構下ネタです。
蕗田嬢の書かれる丁稚八雲君も登場します。

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初めて会った時、なんて常識的で親切ではっきりとしたでも優しい人であろうかと思った。
無論、それは八雲が最初に会った月が強烈であったからでもあろうが、この上なく人当たりのいい蒼はにっこりと笑みを浮かべて月の我儘を聞いている姿を八雲はまるで佐保姫のようだと思ったのは一生明かせない事実であろう。
今は・・・滝夜叉姫のようだと思っているのは秘密である。

理不尽な事を言われてもうんうんと頷く姿は見慣れたもので、接客も向くのであろうが彼女自身は黙々と工房に篭っているか、絶対に立ち入らせてはもらえない仕事部屋に篭るか音楽を奏でているかの基本はこの三つ。
でかけるといえば数少ない友人とかレッスンか。
一人で行けば行き先は美術館図書館博物館か映画館か史跡のいずれかという非常にわかりやすいひとでもあった。
それ以外の場所にでかけるのは基本仕事だ。
そう、彼女は引篭もりに近い。基本的に。
案外姉の月の方が引篭もりに見えるが自分で気の向くまま散歩なぞする。
それが蒼には無い。
凝った作りの庭を眺めながらお茶をしている所は見るがおのずと出かけるということはせず、なるだけ篭る。
そして仕事部屋からは時折悲鳴が聞こえるがそれは月に聞かなかったことにしなさいと言われたのでそのとおりにしている今日この頃。

さて、八雲も今は月の温情にて学校に通っている。
学生服のままスーパーの袋を持って裏口より帰宅すれば蒼は愛想良くお客さんと話しており、目だけでにっこりと八雲の帰宅を認め直ぐにお客さんに意識を戻す。暫くしてピーターチャイムトーンの音がすれば靴音がして住居部分にて靴を脱いで蒼がにっこりと微笑んだ。

「おかえりなさい八雲君。」

「ただいまです、蒼さん。」

こげ茶色のしっかりとしたダイニングテーブルに置かれたビニールをのぞいてあら、と蒼は声を出して少し眉を上げるとはあとため息をついた。

「八雲君少しは遊んできたらいいのに。」

「いえ、まだそういう相手もいないですから。」

「気をつかわないでよ。これ、月の今日の注文?」

「はい、今日は魚の気分と言っていまして。近くの魚屋さんにいい金目鯛が入っていたものですから。」

新聞紙に包まれた鯛を持って蒼はまな板の上に鯛を置けば八雲が自分がする為に動くと、びし、と人差し指をつきつけられる。

「学校疲れたでしょう?座って宿題でもしていたら?部屋でもいいし。」

こういう時の蒼は絶対に折れない。
はい、と頷き黙って八雲は椅子にかけると、蒼の素早い動きを見ながらぼんやりとしている。
蒼はエプロンをかけて魚を素早く捌き、一部をジップロックにいれお湯を沸かす。具材を刻んで、鍋に手早く入れているうちにお湯が沸き、ポットとカップが温められて紅茶の香りがあたりにただよう。
目の前におかれた紅茶はハーブ入りで心が落ち着く滑らかな口当たりはブランデーでもいれたのであろうか、素早い蒼の動きは忙しい厨房で働いた事がある人ならではで八雲は見習いたいと常々おもっている。
さて、という声と共に蒼は使った調理道具を全てウォッシャーにいれるとエプロンを外して椅子に腰掛けた。

「学校はどう?お小遣い足りなくなったら言ってね。」

「有難う御座います。学校はまだ通い始めて一週間目ですから特に何という事はありませんよ。でも小学校から大学まである所ですからなかなか溶け込みづ辛いです。」

「悪いわね。何とかしてあなたが前に通っていた学校に戻れれば良かったのだけれどもう退学届出ていたしね。まあ・・・・なんとかしても良かったのだけれど通学も大変でしょうし、八雲君も嫌がったから・・・」

「いえ・・・別にいい思いでも無かったですからね。いいんです。」

蒼の不穏な言葉は無視する。
月に教えられたルールであるが、それは月にも適応出来る事を八雲は身を持って知っていたのでここは笑顔でごまかす。

「まあお坊ちゃんお嬢さんばかりなのは確かだけれどね。
 でも人脈と思って頑張って。鼻持ちなら無い人生経験の浅い若造に八雲君が負ける筈も無いのだからね。でもあそこならやりたいこと興味を持った事に対して学べる事は普通の所よりも多いから。それだけは保証するわ。」

しっかりと頷いて八雲は蒼の言葉をかみ締める。
蒼はそんな八雲をほほえましく見守ってふと、時計を見ると紅茶を一口飲んで立ち上がった。

「八雲君、月さんが戻るまでTVでも見ていましょうか。」

はい、と先んじてリビングへと移動すると八雲はリモコンを持ってTVをつけると、いつも見ているニュース番組が流れ出す。
月と蒼に共通している事だが基本的にこの二人は娯楽番組を見るのは少ない。
だが蒼は八雲が気兼ねなくTVを見れるように小型TVを八雲の自室に置いてくれているが、このリビングにて見るTVはニュースか教養番組と決まっているのだ。
考え事をしていたせいか八雲の手からと、とリモコンが落ちて少し丸型のリモコンは転がってTV台の下に落ちてしまった。
絨毯の上に落ちたせいで大きな衝撃は無かったが、いかんせん精密機械であるから八雲は急いでTV台の下に手をやった瞬間、臨時ニュースが流れる。
アナウンサーの女性が緊張した面持ちでスタッフから原稿を受け取り、「臨時ニュースです」と告げる。

「本日先頃、中東○○国にてホテルロビーが爆発。怪我人多数、日本人の有無は未だ不明です。調べによりますと、女性が爆発したという証言から自爆テロの可能性は高いと思われます。」

告げられたホテルは米国系列の有名なホテルで、日本人も好んで良く泊まるホテルだ。(月曰く、なんでわざわざ高いお金を出してまっずい日本食を食べたがるのか理解できない、と常々ホテル名を聞く度に文句を言うホテルである。)
またか、と眉をしかめて八雲はTV画面を見てそのまま視線を蒼へとうつせば蒼は眉間に皺をよせてとても不機嫌な顔をしている。

一時中断していたニュースが再びアナウンサーの口から続けられた。
息を弾ませてややうれしそうに。

「確認できました、日本人はいません、繰り返します犠牲者に日本人はいません。」

次の瞬間、八雲の目の前をクッションが飛んだ。

パフ、というやわらかい音と共にTV画面に当たり続いて二個目が命中、三個目は横にそれて、蒼は投げつける物を何か探していたので慌てて八雲が立ち上がる。
だって目の前にはティーカップしかないから。

「蒼さん!」

「八雲君TV消して!」

普段の穏やかさの欠片も無い激しい口調で言われ慌てて八雲はTV台の下にかがむと蒼は口をヘの字に曲げる。

屈んだ丁度頭の上にTV電源があるからであると気付いた時はもう遅い。
蒼はTV台の後ろに回って。


バチン、という音がしてTVは沈黙した。

アンビリカルケーブルがきれても内蔵電力で少しは持つ筈が、違うこれはTVだそんな事は無い。
要するに電源をわざわざTV台を動かして引き抜いたのだ。

なんて乱暴な。

あっけにとられる八雲を無視して蒼はそのまま足早に自室の方向へと引き上げていく。ドン、と扉が閉められてドンドン、と暫く音がしてそして静かになった。


固まったままの八雲がようやっと落ち着いてリモコンを取り出しテーブルの上の置く。
そしてそのままじ、っと床に座ってなんなのだろうとぼんやりしていれば玄関の開く音がして、目の前に薄桃色のスリッパが映る。

顔を上げれば無表情の月だ。

「何してるのこんな所で。寝るなら別の場所にして頂戴邪魔。」

わかりやすい。月は八雲にとって逆らってはいけない人ではあるがその行動に理解の範疇を超えるものはなかった。

「あの、」

言葉にならない八雲を見て本当に邪魔であったのであろう月は自分のバッグを八雲の頭に置いてソファに腰掛けてリモコンに触れる。

TVはつかない。

「ちょっと・・・・・・・・・・・・・蒼は?」

TV台が動いているのに気付いたのであろう、文句を途中でおさめて八雲はそっとバッグをテーブルに置きながら蒼の自室の方へと視線を写せば月が眉を上げる。
こういうところは双子なせいかそっくりの仕草だ。

「あの、TVのニュースでテロがあって・・・」

「わかったわ。で?夕飯は?」

「はい、蒼さんが準備を終えてます。魚はちゃんと買ってます。」

「そう・・・蒼が準備したなら勝手にいじったら今は不機嫌になるわね。
 わかった。お茶いれてて。洋食?和食?」

「わからないです。」

「だったら大人しくダイニングで待ってて。蒼呼んでくるから。」

それだけ言うと月は立ち上がり蒼の部屋へと向かっていった。

十五分ほどしただろうか、静かにダイニングに入ってきた蒼と月を見て八雲はほっとした笑みを浮かべると、蒼も笑みを返しそのままいつもの蒼と同じ振る舞いのまま夕食が始まる。
鯛のカルパッチョにサラダ、パスタ、ムニエル、デザートとお茶。
食後のワインを飲みながらいつもよりちょっと酒量が多いだけで変わらない蒼は片付けを終えるとそのままお風呂入って寝るわ、とだけ告げてダイニングから出て行った。

まだ食後のお茶を飲んでいた八雲は同じくデザートと紅茶を口にしていた月を見れば月は片眉を上げて首を少し傾ける。

「気にしない事よ。」

八雲の理解できない事のそれが一つ目であった。

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ひんやりとした感触に蒼は頬をすりつけて、いとしげにまるで我が子の如く慈しむ仕草をしている。
凹凸の激しい硬い鉱物に向けて並々ならぬ情を感じ取った男が小さくため息をつけば蒼はそっと鉱物から顔を離してカサカサの唇で微笑んだ。

「これ。わたしに譲っていただけませんか。」

真っ直ぐ射抜くような黒い瞳に見つめられて男は異国の言葉を話す蒼をじっと、見ると諦めたように首を振る。


『お嬢さん、これはいわくつきの品だがね、お嬢さんに言っても聞いてはくれないだろうね。わかったよ、そんなに大事そうにするならお嬢さんにあげよう。ただね、決してそれを・・・・人に譲ってはいけないよ。それはお嬢さんのものだ。お嬢さん以外が持てばそれは必ず       なるから。』

深く頷いて蒼はゆっくりと中指にはめていた指輪を差し出すと、己の手の中にしまった鉱石を指差して指を軽く魔法をかけるように振る、それはチェンジを意味するのだと簡単に伝わって男は皺のある目元で微笑んだ。

『わかった。』

お互いに知らぬ言葉を交わし、微笑み合って頷けば交渉は成立。
そうして蒼は懐深くに鉱石を抱え込むと雑踏に紛れて行く。

暫く歩いて蒼はふと、振り返ればそこにはもう何もなかった。












半刻前に遡ろう。
それは仕事仲間でもあり、また腐れ縁の強い御堂と共に訪れた異国の道での出来事だ。
暑い日差しを手で軽く遮って、蒼がため息をつくと御堂が軽く笑ったので、上目遣いに睨むとごめん、と御堂が少しも反省の色の無い謝罪を見せる。

「兄の前じゃそんな様子見た事無いなあ、って思っただけですよ。」

「嫌味?」

「違う。そうじゃなくて・・・」

蒼はホテルに置いてきた帽子の方がよかった、と思い返しながらもいつもとは違う御堂のこの旅へ誘った時の様子を思い返しながら皮肉気な息をかみ殺し、片眉を上げるとあたりを見渡してはっきりとした声で告げた。

「ひとまず座って冷たい飲み物でもどうかと思うのだけれど?」

その言葉に御堂は強く頷いて、近くを見渡すとあそこにしようと蒼の手をひこうとする。その誘いの手を振り払い、黙って御堂の後ろをついて行きながら蒼は道路にのんびりと体を横たえた牛を横目で見、そのどこか静けさをたたえた瞳に見入りそうになりながら、小走りで御堂の後ろを付いて行く。

途中振り返りながら外国人用の喫茶に入り、流暢に言葉を操り注文をすると、御堂は蒼の名前を呼ぶ。

「紅茶とスコーンを頼んだのだけれどよかったかな。」

「有難う。」

しばし天使が通り過ぎる。

言いにくそうに御堂が口を開くまで蒼はただ店内を歩くボーイの白い制服についた小さな染みを見て、その視線に気づいたモデルのように美しい黒い巻き毛のボーイの焼けた肌から覗く真っ白な歯の清楚さに微笑み返していた。

「今回は勿論仕入れもあるけれど、伝えたい事がありましてね。・・・兄が離婚をしました。」

「そう。」

丁度注文の品を持ってきたボーイに礼を言って受け取りチップを渡し、蒼がカップを揺らすと御堂は目を細めて少し泣きそうな顔のまま、蒼、と呼びかけた声でようやく蒼は御堂の方へ視線を向けてカップをソーサーの上に戻す。

「だから縁を切りたいという事なの?」

「違う、逆です。これで貴女がもし私との縁を切りたいというならば私にはどうしようもない、ですが、私は・・・」

蒼はこれもらってもいい?と御堂の皿のビスコッティを指差せば黙って頷く御堂の目の前でビスコッティを濃い紅茶に浸して一口口に含む。

「関係無い事よ、もうね。そんな事だけの為に来たというならば早く帰って欲しいぐらいなのだけれどどうなの?」

御堂にとっての意外な返事に驚いたままの表情で御堂はでは、と身を乗り出す。

「母も貴女には申し訳ないといっています。もし貴女さえよろしければ戻ってきてはもらえませんか。兄の元へとはいいません。仕事上の付き合いもあるのですから、もし、よければ」

御堂の言葉を遮って、蒼は不愉快そうに眉を寄せ、人差し指を突き出すと、御堂は息を飲む。


「それ以上言うならば仕事上の付き合いも無くなると思って頂戴。
 何の為に一緒に来てると思っているの。利害関係の一致でしょう?
 だからこそそういう話はしないで。」

わかったなら行きましょう、と蒼は紅茶を急ぎ飲み干すと、行儀悪く、スコーンを口にほおりこんで、歩き出すその後ろを御堂が会計を急ぎ行い追いかける。暫く無言で歩きつづけていると、急に止まり御堂はぶつかりそうになりながら足を止めた。

「市へ行くのではないの?」

「ええ、そうですね・・・折角来たのですからその後にアショカ・ピラーを見にいきましょう。」

「あれはモスクの中にあるのでしょう?入れるの?」

「大丈夫ですよ。」

少し崩れてはいるがいつもの調子を取り戻した御堂に蒼は遠慮無くでは、とサンダルを擦り、方向転換すると派手な乗合バスを指差した。

「あれで行く?」

「一応予算はあるので個人タクシーで行きましょう?」

げんなりとした御堂の返事が返ってくるので蒼は少しだけ笑った。

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石には、涼子の知らない言葉が記されていた。

それに添えるようにして蒼が差し出す銀の鍵。


差し出されたものを受け取って涼子はたおやかに微笑むと、受け取った鍵を大切に懐にしまいこみ、これは何?と桜色の爪で指し示す。


「子を得よという事。」

「それはあの女の産んだ子どもを引き取りなさいという事かしら。」

「そう。」

一瞬考え込んだ涼子はわかったわ、と頷き美味しそうに紅茶に口をつける。

「私の子どもと一緒に育てるとしましょう。」

これで良いかしら、と涼子はまるで駄々をこねる子どもを宥める口調で言うと、蒼は爽快な笑い声をたてて、お茶のおかわりはどうかしら、と首を傾げて問うた。







「そういえば」

振り返り長い髪を簪で上げながら月が蒼を見れば、蒼も丁度髪を上げているところだった・・・・・いらなくなった箸で。

「いい加減にその惰性直しなさいよ?衣装箱・・・アヘン戦争前につくられた英国人の特注品の。あれ蒼が売ったのよね?」

「売りましたよ、言わなかったかな?」

「聞いたような・・ああ涼子さんに売ったんだっけ?」

「そう。涼子さんに。鍵も渡してあるよ。」

自分の髪を整え終わった月がため息をつきながら蒼の髪を綺麗にまとめあげている箸を抜くと、真っ直ぐな黒髪がすとんと落ちる。
近くにあった鼈甲の簪を手に取り、櫛を持つと蒼の髪を梳く。その心地よさに蒼がうっとりと目を閉じれば月はなんだか嬉しそうに何度も何度も髪を梳く。

「結局どうして涼子さんに渡したのかは教えてくれなかった気がする。」

「話す程の事ではないよ。あるべき場所へ私は置くだけ。
 それが良い事でも悪しき事でも私はただただなぞるだけ。」

月の手によって上げられた髪は少し形はくずれているもののすっきりと蒼の項を見せる。蒼は満足したように息を吐き、鏡の前で確認しつつ色の悪い唇に紅をのせていく。

「それでいいの?」

「いいの。介入する事は出来ないのだから。
 そもそも呼んだのは涼子さんだしね、私はいいと思う。」

気にもせず笑う蒼の手から紅を腹立たしげに奪い、月は違うわ、と呟くと軽く唇を噛んで、子どもの事よ、と言う。

「涼子さんの?それとも旦那さんのお相手の?」

「どちらかといえば相手の子よ。」

ふふ、と蒼は鏡から目を離して、木製の鏡台引き出しからそっと古い鏡を取り出す。

「月さんは子どもには優しいね。だから渡したの。」

鏡を短い爪でこん、と鳴らし蒼は狐のように笑った。そう、温度のない狐のような、どこか奇妙で歪な笑み。

鏡を手渡された月は一瞬、赤く染まる中に銀の光と紅葉の手が見えた錯覚にくらり、と眩暈を覚えて蒼を見れば、蒼はもうお気に入りの紅葉の単を纏って、帯を肩にかけ帯紐を合わせて思案顔。

「どっちかを選んだのは涼子さんだから。
 だから涼子さんは衣装箱に直したの。大切だった過去の恋を。あの時は協力してもらって悪かったと思ってるけれど、ね。」

「いいわ。私も久々に外国に行けたし。珠には貴女と一緒に骨董市というのも悪くはないわ。ハギスも美味しかった事ですしね。
その後貴女が仕入れの為に暫く帰って来なかったのも良いとしましょう?警察も来なかった、そう来るのは嫌だと言った約束は守ってくれたものね。
貴女が警察に行ったけれどね。」

ようやく帯絞めを決めて、今度は帯揚げで悩みながら、でもね、と蒼が振り返る。

「案外警察の方は紳士だったわよ。私は容疑者じゃなかったからかもしれないのだけれど。ご飯も美味しい蕎麦、出来れば天麩羅付きが食べたいんです、って言ったら本当に出前してくださって、結構これが美味しかったの。
ああお店聞いてくればよかったわ。
まあ、死体が入った長持ちを売ったお店でなおかつ鍵がかかっていたというのだから一応聞かなくてはいけないわけよね、それで鍵は私が旅行がてら探しに行く予定だったんですって。だからもしかしたら鍵穴あたりを弄ったらふるいものですから勝手に鍵が閉まってしまったのかもしれません、とは言ったの。
あのお宅にはお子様もいらっしゃらないという事でしたので安心していました。でも、大人の力でないと開かないんですよ、と言ったら無罪放免。」

「そう・・・・涼子さんには アリバイ があるものね。」

「そこはいいっこなしよ。」

「蒼は本当に上手よねメイクも。私と蒼は一緒に出国して次の日に涼子さんと合流して。ふふふ、まあいいわ。いいものも手に入ったし、涼子さんはいいお客様だし。・・・・あらお客様?」

月が帯を結び終わった蒼を片目で見て窓の外に人影を確認すると、階下へと降りていく。
待って、と蒼が続き、月を追い越し店の扉を開けた。

ピーターチャイムトーンの音が鳴る。

「こんにちは蒼さん。」

「こんにちは刑事さん。」

にっこりと笑う後ろで月が「蒼・・・」と低い声を出せば蒼は慌てて振り返って違うの!と弁明し始めた。

「今日は「今日は品物を見せていただこうと思いまして。お姉様ですか?よく似ていらっしゃるのですね、美人姉妹とは目の保養になります。」

「刑事さん、お上手。でも私たちよりも・・」

奥に急いで走っていった蒼を見送って、刑事は近くの椅子に腰を降ろせば月は長丁場ならばお茶を、と思い、品物とお客の雰囲気に合わせて紅茶をいれようと喫茶室へと姿を消す。入れ違いに蒼が嬉々としてベッチンのはられた品物入れを二つ持って現れて、刑事、と呼ばれた男は目を輝かせる。

「これは!見てもいいのかな?」

「勿論です。これが日本の大正時代の蒔絵の懐中時計。漆の部分も綺麗でしょう?音も聞いてみて下さい。正確に今でも時を刻んでいる。
これは昭和初期の華族の持ち物で・・・」

話のこしを折らないように、月が静かに現れて近くにカップを置く。

刑事は懐中時計を目を潤ませて見ながらカップに口をつけた瞬間、懐中時計を丁寧に並べて開けていくという作業を滑らかにしていた蒼の集中力が欠けて、刑事を見た瞬間顔が引き攣った。



「スミマセン!」

蒼の静止もむなしく、刑事はその場でむせこむように肩を揺らした。


 

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